2022年1月14日改訂
【合唱団、吹奏楽団などでの楽譜の配信やコピー①】
団員がタブレット端末などでも楽譜を見られるようにするために、楽譜をスキャンしてクラウドや共有のサーバーにアップロードしても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けて行ってください。
著作物をクラウドや共有のサーバーにアップロードして配信(公衆送信)するときは、著作権者の許諾が必要です(著作権法第23条)。
例外として、教育機関における授業や、小・中・高校の部活動などで著作物を配信したりコピー(複製)したりすることは、一定の条件で認められます(著作権法第35条)。ここで言う一定の条件とは、教育を担任する教員や授業を受ける児童・生徒などが、授業や部活動などで使用するために、必要な範囲内で公衆送信や複製を行う場合を指します。
ただし、授業等で使用する楽譜を人数分を購入せずに配信やコピーで済ませるなど、すでに販売されている楽譜や、将来販売される可能性がある楽譜の売れ行きを悪化させるおそれがある場合(権利者等の利益を不当に害する場合)には、認められません。
【合唱団、吹奏楽団などでの楽譜の配信やコピー②】
インターネット上の有料配信サイトで購入した楽譜データ(電子楽譜)を、クラウドや共有のサーバーにアップロードしたり、団員にメールで一斉送信したりしても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けて行ってください。
通常、楽譜配信サイト(※)の運営者が著作権者から許諾を受けているのは、「サイトの運営者が楽譜データをインターネット上にアップロードすること」「サイトの利用者がアップロードされた楽譜データを自らのパソコンなどにダウンロードすること」などについてです。サイトの利用者がダウンロードした楽譜データを多数の人と共有したりメール送信したりすることまでは許諾に含まれていませんので、著作権者(作曲家、作詞家等)の許諾を受けずに行うことはできません。
(※)著作権者から許諾を受けていない違法サイトに掲載されている楽譜は利用しないでください。適法なサイトには、原則として、著作権管理団体の許諾マークと許諾番号が表示されています。ただし、許諾マーク等の表示が免除されているケースもありますので、不明な場合は、著作権管理団体または当協議会にお問い合わせ下さい。
【合唱団、吹奏楽団などでの楽譜の配信やコピー③】
練習用に楽譜を1部だけ購入して、コピーして団員に配っても大丈夫ですか?
いいえ、人数分を購入するか、許諾を受けてコピーしてください。
著作物をコピー(複製)するときは、著作権者の許諾が必要です(著作権法第21条)。
仮に、小・中・高校の部活動や授業などで使用するための楽譜であっても、人数分を購入せずにコピーしたり配信したりして済ませることは、著作権者(作曲家、作詞家等)の利益を不当に害する可能性が高いため、許諾を受けて行う必要があります。
また、市販の楽譜をコピーする場合は、事前に発行元の楽譜出版社にご相談ください。
【合唱団、吹奏楽団などでの楽譜の配信やコピー④】
購入したCDを採譜し、パソコンで楽譜を作成して、団員に無料で配布しても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けてコピーしてください。
楽譜をコピー機などで複製する以外にも、手書きやパソコンで作成することなども、著作権法上の複製に当たります。
自作した楽譜をデータや紙で販売する場合はもとより、無料で配布したりクラウドなどにアップロードしたりする場合は、著作権者の許諾を受けてください。
【合唱団、吹奏楽団などでの楽譜の配信やコピー⑤】
合唱団の人数が増えたので、使用している楽譜を買い足したいのですが、近くの楽器店では品切れで買うことができませんでした。コピーしても問題ありませんか?
いいえ、無断ではできません。
品切れなどで楽譜を購入できない場合は、次の方法で販売の状況などをご確認ください。
①発行元に問い合わせる。
発行元に在庫がある楽譜については、取り寄せることができます。また、重版未定や絶版などの場合でも、発行元からコピー楽譜の提供を受けられることがあります。
②インターネット上で販売情報を調べる。
・オンラインショップなどの在庫
・オンデマンド出版(受注生産)
・楽譜配信サイト(パソコンでのダウンロード、コンビニエンス・ストアのマルチコピー機などでのプリントアウト)
これらの方法でも入手できず、楽譜をコピーするときは、著作権者の許諾を受けてください。
また、吹奏楽団などで、購入した楽譜のパート譜が団員の数に足りない場合は、発行元の楽譜出版社に連絡し、補充用のパート譜を購入してください。
【合唱団、吹奏楽団などでの楽譜の配信やコピー⑥】
演奏会で演奏する楽曲の楽譜をコピーし、演奏曲順に並べて製本しても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けて行ってください。
コピー楽譜を製本して楽譜集を作成することは、すでに販売されている楽譜や、将来販売される可能性がある楽譜などの売れ行きを悪化させることにつながり、権利者等の利益を不当に害するため、発行元の楽譜出版社にご相談の上、著作権者の許諾を受けてください。
【学校の授業での楽譜コピー】
音楽の授業で使用するために、学校が所有する楽譜をクラスの人数分コピーしても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けてコピーしてください。
授業の教材として使われる楽譜は、通常、先生や児童・生徒が購入して使用するものであり、人数分を購入せずにコピーで済ませることは、権利者等の利益を不当に害する可能性が高いため、発行元の楽譜出版社にご相談の上、著作権者の許諾を受けてください(Q1もご参照ください。)。
【コンクール参加のための著作物の複製①】
コンクールに参加するに当たって、審査員用の楽譜を提出する必要があります。市販されていない楽譜のため、手元の練習用楽譜をコピーして提出しても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けてコピーしてください。
小・中・高校の部活動の一環としてコンクールに参加する場合でも、コンクールの主催者が教育機関ではない場合は授業に該当しないことから、楽譜コピーなどの著作物利用にあたっては著作権者の許諾を受けてください(著作権法第35条)。
なお、各種音楽コンクールの参加規定や参加要項などにおいて、未出版や入手不可能などのやむを得ない事情で楽譜をコピーして提出する場合は、著作権者が発行する許諾証の提示を義務付けているケースが多いようです。
【コンクール参加のための著作物の複製②】
コンクールがビデオ審査になったため、演奏の様子を動画で撮影して提出する必要があります。著作権の手続きが必要ですか?
【編曲するときの手続き】
パート編成に合わせて楽曲を編曲し、楽譜を作成して団員に配りたいのですが、どのような手続きが必要ですか?
はじめに、編曲することについて著作者の同意を得てください。
著作物を改変(編曲、訳詞など)する場合は、著作者の許諾が必要です(著作権法第20条)。著作者本人に連絡するか、連絡先が不明の場合は、JASRACなどの著作権管理団体にご相談ください。
編曲の許諾を受けた後に、楽譜データを共有したりコピーして配布したりすることについては、著作権管理団体などが指定する方法で許諾を受けてください。
【演奏会などでの歌詞や楽譜の配布①】
入場料無料の演奏会で、来場者と一緒に歌うために、プログラムに歌詞を掲載しても大丈夫ですか?
いいえ、許諾を受けて掲載してください。
著作権法では、①営利目的ではないこと、②入場料が無料であること、③出演者に報酬が支払われないことの3つの条件を満たしている場合には、例外として著作権者の許諾を受けずに著作物を演奏することが認められています(第38条)。
しかし、プログラムなどに歌詞や楽譜などの著作物を掲載(複製)することについては、この規定は適用されませんので、著作権者の許諾を受ける必要があります。
また、コンサート・講演会などで、歌詞や楽譜をプロジェクターを使って投影する場合や、モニターに表示する場合なども、そのためのデータの作成・保存は複製にあたりますので、同様に著作権者の許諾を受ける必要があります。
【演奏会などでの歌詞や楽譜の配布②】
学校行事(入学式、卒業式、音楽祭など)で合唱するために、歌詞をコピーして全校生徒に配布しても問題ありませんか?
配布できますが、注意が必要です。
小・中・高校の学校行事などの特別活動は、授業に該当するため、通常購入するなどして利用する場合を除き、参加する教員や生徒を対象としたコピーの配布は、許諾を受けずに行うことができます(著作権法第35条)。
ただし、印刷会社などに委託してコピーを作成する場合は、著作権者の許諾が必要です。
また、事前に練習するために、歌詞だけでなく市販されている楽譜をコピーして、音楽の授業で教材として利用する場合などは、権利者等の利益を不当に害する可能性が高いので、発行元の楽譜出版社にご相談の上、著作権者の許諾を受けてください。
【自宅練習用の楽譜コピー】
自宅練習用に購入した楽譜を、書き込みをするためにコピーしたいのですが、問題ありませんか?
はい、コピーできます。
個人的にまたは家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的として、使用する本人が楽譜などをコピーする場合は、著作権者の許諾を受けずに行うことが認められています(著作権法第30条)。
多数の友人に配るためのコピーや、仕事で利用することを目的としたコピーなどは、 著作権者の許諾が必要ですのでご注意ください。
【図書館でのコピー】
研究レポートを作成するための資料として、自分の高校の図書館に所蔵している楽譜をコピーしても問題ありませんか?
いいえ、許諾を受けてコピーしてください。
著作権法では、国立国会図書館や政令で定める図書館など(公共図書館、大学・高等専門学校などの図書館など)が、調査研究を行う利用者の求めに応じて、著作物の一部分の複製物を、利用者1人につき1部提供する場合は、例外として著作権者の許諾を受けずに行うことできるとしています(第31条)。
しかし、小・中・高校の図書館は政令で定める図書館ではないため、この例外に該当しません。
【著作権が消滅している楽譜のコピー】
著作権が消滅している楽曲であれば、楽譜をコピーしても問題ありませんか?
コピーできますが、注意が必要です。
著作権の保護期間は、原則として著作者が著作物を創作した時から著作者の死後70年まで(※)です(著作権法第51条)。保護期間を経過した著作物は、公共の財産として自由に利用できます。ただし、市販の楽譜をコピーする場合は、事前に発行元の楽譜出版社にご相談ください。
また、次の場合は注意が必要です。
・原曲の著作権は消滅しているが、編曲や訳詞の著作権が存続している場合や楽譜に編集著作権が存続している場合。
・レンタル楽譜で、契約によってコピーが禁じられている場合
・楽譜集や音楽書から、楽譜を他の素材(解説文や楽曲にまつわる資料、写真など)ごとコピーするなど、各素材の著作権や編集著作権を侵害する可能性がある場合
(※)外国の著作物に関する戦時加算など、例外的な取り扱いがあります。
著作権に関するQ&A
これまで、著作権の保護期間は、作品の創作時にはじまり、原則として著作者の死後50年までとされていましたが(著作権法第51条)、TPP整備法による著作権法の改正によって、2018年12月30日付けで,原則として著作者の死後70年までに変更されました。
保護期間の計算方法は、著作者の死亡した翌年の1月1日から70年目の12月31日までと計算します。保護期間の終了した作品は公有(Public Domain=PD)とされ、許諾を得なくとも自由に利用することができます。
なお、「団体名義の作品」は公表後70年間、「共同名義の作品」は最後に亡くなった著作者の死後70年間保護されます(著作権が消滅しているかどうかは、JASRACのホームページで公開している作品データベース検索「J-WID」で確認することができます。)。
作詞者・作曲者などの著作者は著作者人格権でも保護を受けています。例えば、楽曲の編曲、詞の改作、翻訳など、他人の著作物に改変を加えて公表するときは著作者の同意を得る必要があります(個人的に、家庭の中で利用することは自由にできます)。著作者の連絡先が分からないときは、楽譜出版社やその作品を管理している音楽出版社、またはJASRACなどにお問合せください。
著作権法では、著作権、著作者人格権を侵害する者に対し、その侵害の停止や予防、損害賠償、名誉声望を回復する措置などを請求することができると定めています(著作権法第112、114、115条)。このほかに罰則として、著作権侵害の場合は10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、著作者人格権侵害の場合は5年以下の懲役または500万円以下の罰金、さらにその両方が科せられる場合もあります。なお、法人などが著作権を侵害した場合は、3億円以下の罰金となります(同119条、124条)。
※このほか、著作権情報センター(CRIC)、JASRACのホームページにも数多くの著作権に関するQ&A(FAQ)を掲載していますので、そちらもご参照ください。